貸倒引当金、貸倒損失の違いって何ですか?そもそも貸倒がわかりません。
使い分けの原則は
①貸倒引当金を設定していないときは、貸倒損失を使う。
②貸倒引当金を設定しているときは、貸倒引当金を使う。
これだけ覚えていればOKです。
貸倒(かしだおれ)
相手先の倒産等のため、売掛金や手形が回収出来ない(現金化できない)こと
貸倒損失(貸倒引当金を設定していない場合)
このパターンが基本です。
【問題】
相手先が倒産し、売掛金100円が貸倒れた(売掛金は当期に発生)。
【解答】
貸倒損失100/売掛金100
【解説】
売掛金という債権が紙くずになってしまいました。
価値がなくなってしまったので、100円→0円に減らします。
売掛金(資産)が減るので
〇〇/売掛金100
ものやサービスを使った結果、資産が減ったときは費用の勘定を使います。
(例)
消耗品費(費用)/現金(現金)
水道光熱費(費用)/現金(現金)
今回は厳密にはものやサービスを使ったわけではないですが、売掛金という資産が減っています。
よって、借方(左)に費用勘定を使います。
使う勘定は「貸倒損失(費用)」
問題文のキーワードは「(売掛金が)貸倒れた」
【貸倒】損失
これが最も基本的な仕訳パターンです。
貸倒引当金を設定している場合
まずは日本語で考えてみましょう。
いきなり、回収できなくなってしまって損失がでてしまうとダメージが大きいのです。
そこで、あらかじめ将来損失がでそうなことを費用としておきます。
株主目線で考えると、貸倒「損失」と損失という言葉が出てくるとびっくりします。
そうならないように準備しておくのです。
貸倒の過去の実績をもとに、将来、どのくらい貸倒が起きそうかを見積もる
→貸倒引当金
【例】
いつも売掛金の3%くらいが貸倒れていたとしたら、
例:①全部で売掛金100円あります。②いつも3%くらい貸倒れています。
→ということは100*3%=3円くらい貸倒れるのでは?
これが貸倒引当金です。金額は3円。
では、簿記用語に置き換えてみましょう。
【問題】
①売掛金の期末残高100円に対し、②3%の貸倒引当金を設定する。
【解説】
貸倒引当金繰入(費用)3/貸倒引当金(負債※)3
※厳密には資産のマイナスですが、負債と考えても良いです。
これが基本です。
「②3%の貸倒引当金を設定」した結果、引当金が3円となった。
→ここで大事なことは、引当金が3円になるように仕訳で調整する、ということです。ゴールが3円。
上の仕訳の直前は貸倒引当金は0円だったので、貸倒引当金繰入は3円でした。
引当金が足りない時
では、仕訳直前の引当金が1円だったらどうなるでしょうか?(…③)
今が1円でゴールが3円です。
1円→3円になるように調整しますので、+2円分調整をします。
(元々)貸倒引当金1円
+
貸倒引当金繰入2/貸倒引当金2
↓
(結果)貸倒引当金3円
上の言葉を簿記の問題に置き換えてみましょう。
【実際の問題】
売掛金の期末残高100円に対し、3%の貸倒引当金を設定する。
なお、貸倒引当金の期末残高は1円である。
【解説】
100*3%=3円になるように貸倒引当金を見積もりします(設定します)。
今は貸倒引当金は1円なので、2円足して3円にしましょう。
したがって、
貸倒引当金繰入2/貸倒引当金2
と仕訳します。
引当金を設定していて、実際に貸倒れたときの仕訳
【問題】
今、貸倒引当金が3円設定しています。
売掛金が1円貸倒れました。
【解説】
貸倒引当金1/売掛金1
一番最初の仕訳と同じように、売掛金が紙くずになってしまいました。
よって、売掛金を減らします。
◯◯/売掛金1
では、この〇〇にいれるべき科目は何でしょうか?
貸倒損失(費用)?→☓ この費用勘定を使わないために引当金を設定した(※)。
貸倒引当金繰入(費用)?→☓ 引当金を設定するときのみにつかうため
貸倒引当金?→これを使います【資産のマイナス(負債)勘定】
※引当金を設定する目的は、以下のとおりです
→いきなり大きな費用を計上しないように、あらかじめ費用を計上しておく。
→ということは、引当金の出番が出てきたときは、もう「費用」は使わないということです。
あらかじめ設定しておいた「貸倒引当金」を使う(減らす)という考えでOKです。
もともと貸倒引当金は貸方ですので、減らすときは逆の借方に書きます。
よって仕訳は
貸倒引当金1/売掛金1
となります。
実際の問題文と解答
【問題】相手先が倒産し、売掛金1円が貸倒れました(前期に発生)。貸倒引当金の残高は3円です。
【解答】貸倒引当金1/売掛金1
貸倒引当金が足らなかった時
【問題】
今、貸倒引当金を3円設定しています。
売掛金が5円貸倒れました。
【解説】
減った売掛金は5円なので
〇〇/売掛金5
貸倒引当金は3円なので。先ほどと同じように
貸倒引当金3/売掛金5
このままでは、左右のバランスが悪いですね。
この場合は、借方(左)になにかの勘定を入れます。
貸倒引当金3/売掛金5
〇〇2
では、〇〇に何を入れるでしょうか?
最初に仕訳で使った(貸倒引当金を設定していない)「貸倒損失」が答えです(※)。
よって、
貸倒引当金3/売掛金5
貸倒損失2
※貸倒引当金を3円分すべて使っていしまって、残高が0円になってしまっています。
この場合は引当金を設定していない時と同じように仕訳をすれば良いということです。
貸倒損失と貸倒引当金の使い分け 【使い方がわからない方】
貸倒引当金を使うのか、貸倒損失を使うのか フローを使って覚えると良いでしょう。
①当期の売掛金or前期の売掛金のどちらの貸倒れですか?(当期の発生or前期の発生)
当期の売掛金 前期の売掛金
↓ ↓
↓ ②貸倒引当金を設定済?
↓ ↓NO ↓YES
↓ ↓ ↓
貸倒損失←←← 貸倒引当金
なぜ、こうなるのか説明します。
① 当期の売掛金が貸倒れたときは貸倒損失
→貸倒引当金は前期以前の貸倒実績に対し、一定の率を掛けて計算しています。
ということは、「当期」の貸倒れが計算に含まれるのは来期以降です。
当期の時点では、当期の売掛金に対する貸倒引当金は設定されていないのです。
引当金が設定されていないのだから、原則通り貸倒損失を使います。
②-A 貸倒引当金を設定していますか?→NO
この場合も①と同じように、貸倒損失です。
②-B 貸倒引当金を設定していますか?→YES
貸倒引当金が設定されている範囲で使います。
貸倒引当金以上に貸倒れたら、貸倒損失を使います。
復習問題
貸倒損失100/売掛金100
貸倒引当金繰入3/貸倒引当金3
貸倒引当金繰入2/貸倒引当金2
貸倒引当金1/売掛金1
貸倒引当金3/売掛金5
貸倒損失2
貸倒損失と貸倒引当金(繰入)の判別問題
貸倒損失or貸倒引当金のどちらを使うかを考えてみましょう。
貸倒損失
貸倒引当金
貸倒引当金
さいごに
・貸倒損失と貸倒引当金を使う状況を覚えましょう。
・貸倒引当金はあくまで目標(ゴール)額です。このゴールになるように調整して繰り入れます。
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