しくりくりしーとは?意味はなんだろう?【仕入・売上原価・繰越商品】

「しくりくりし」 仕入と売上原価の違いがわかりません。仕入と繰越商品と売上原価の仕訳がわかりません。教えてください。
しくりくりしーとは以下の仕訳の略字です。
仕入/繰越商品
繰越商品/仕入
この仕訳の意味は、以下のとおりです。
期首の商品に仕入を足します。そこから期末の商品を引いて、売上原価を求めます。
(期首商品+仕入-期末商品=売上原価)


なぜ、このような式を使うのでしょうか?
売上原価(原価)と売上高(売値)は対応しています。売った商品に対応する売上原価を損益計算書に計上します。
実は毎回、売上原価を把握しているのは大変なのです。
年間に何百回、何千回と仕入と販売(売上)しているため、売っているたびに売上原価の計算をするのは難しいのです。
そこで、月末や期末に残っている商品を数えて、これだけ残っているからこれだけ売れた、と逆算して売上原価を求めます。
なお、仕入や売上の仕訳について復習したい方は、「掛けって何?【1.商品売買①_ぼすとん簿記3級講座】」をどうぞ!
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図を使って仕入れと売上原価の関係を解説
①最初に10円あって、90円仕入れました
売値ではなく、仕入れ値(原価)で計算します。
具体的には、期首に商品が10円あって90円仕入をしたならば、倉庫には最大100円の商品があるはず(10+90=100円)です。
期首商品10円(1個)




ひとつも売れていなければ期末に
100円(10個)あるはずだよね
②しかし、期末に調べてみると…
しかし、期末に商品を数えてみたら20円(2個)しかありませんでした。


③売上原価はいくら?
本来は100円分あるところ、20円しかありあせんでした。
100-20=80円の商品が減っています。
これは商品が売れたためです。ということは商品80(仕入れ値=原価)が売上原価だ、とわかります。
例題
仕訳の流れ

「売上原価が80、(期末に残っている)が20残っている」という事実を表したいです。
※仕訳上は「仕入」勘定を使います。
①期首時点
商品勘定残高10 【残高:商品10】
↓
②仕入れた時
仕入90/現金90 【残高:仕入90、商品10】
↓
③売れた時
今回は120円で売れました。
現金120/売上120 【残高:仕入90、商品10】
※前述の通り、仕入≒売上原価は売ったときには把握しません。 よって、仕入勘定と商品勘定は先程から変わっていないです。
↓
④期末
しくりくりし(↓で解説)
ここで、期末に残っている商品を数えて、その後、売上原価がいくらかを求めます。(今回は80になればOK))
期末の仕訳(しくりくりし)
1.期首商品10の調整
仕入10/(繰越)商品10
期首に残っていた分の商品10が売れました。
※売上原価の代わりに仕入勘定を使います。(借方)
これで、期首に売れた分10+仕入れた分90=100が当期の売上原価になります。
(1.ではすべて売れたと仮定しています。)
仕入10/〇〇
また、期首にあった商品10は売れてしまったので減らします。(貸方)
〇〇/(繰越)商品10
以上より、「仕入10/(繰越)商品10 」となります。
【残高:仕入100、商品0】
数えてみたら商品が20残っていた。
2-1:貸方(売上原価≒仕入の調整)
現在、売上原価(≒仕入)は100です。
売れていない分の20は、売上原価(仕入)から減らします。
売れ残り分は売上に対応した分ではないため、費用にするのはおかしいです。
よって、仕訳は
〇〇/仕入20
2-2:借方(商品勘定の調整)
商品は20残っていて、次の期の貸借対照表に引き継ぐために、商品を0から20を増やします。
(繰越)商品20/〇〇
2-1と2-2をあわせて
(繰越)商品20/仕入20
【残高:仕入80、商品20】
これで、仕入≒売上原価が80、商品が20残っているという事実を表すことができました。
しくりくりしの精算表の問題
では、実際に精算表で解くときはどのようにすればよいのでしょうか?
【問題】
期末商品が20でした。精算表を埋めてください。

①「しくりくりし」の「しくり」の部分(貸方)
仕入/繰入商品ですね。繰越商品から考えたほうが楽です。
残高試算表に記載の数値は、期中に何も仕訳をしていないため、期首から変わっていないです。
よって、この10は期首の商品の数値とわかります。
この商品10は当期中に売れてしまったので、いったん0にします。
②「しくりくりし」の「しくり」の部分(借方)
同額を仕入勘定の借方に記入します。
これで、
仕入10/繰越商品10が完成です。

③「しくりくりし」の「くりし」の部分
貸方に記入されていれば借方に、貸方に記入されていれば借方に、期末商品の数値を記入します。
今回は20を記入。
先ほどの調整で、繰越商品は10→0になっています。借方に20と記入することで、期末に商品が20あることを表します。
一方で、売れ残った分は売上原価(仕入)にはふさわしくないため、貸方に記入することで減らします。
以上より、「繰越商品20/仕入20」の仕訳が完成です。

④貸借対照表、損益計算書への記載

仕訳自体は③までで完成です。しかし、実際に貸借対照表と損益計算書に表示される数値は、いくらなのか集計する必要があります。
繰越商品
元々借方に書かれている繰越商品は最終的にいくらになったのか考えます。
最初は借方に10ありました。貸方に10記載で-10、その後借方に20記載で+20しましたね。
よって、残高は10-10+20=「20」となります。もともと借方でしたので同じように借方に記入します。
繰越商品は資産ですから記入場所は貸借対照表です。
仕入
同じように、元々貸方に書かれている仕入勘定は最終的にいくらになったのか考えます。
売上原価の数値としてふさわしいのはいくらか考えると良いでしょう。
最初は借方に90ありました。これは、当期に仕入れた分90を表しています。
この仕入90には、期首にあった分(期首在庫分)は考えられていないのです。
そこで、いったん期首在庫分も当期仕入分も全て売れたと仮定して考えます。
期首在庫は10でしたね。これと当期仕入分90をあわせて100売れたと仮定します。
しかし、期末で調べてみたら20売れ残ったことがわかったので、これは売上原価にはふさわしくありません。売上に対応していないためです。
よって、この20を100から減らします。
100-20=「80」です。
仕入は費用ですから損益計算書に80と記入。
元々同じ場所である借方に記入して完了です。
復習問題
仕訳問題
問題
期首時点の商品は30
期末時点の商品は20でした。
期末の仕訳をしてください。
仕入30/繰越商品30
繰越商品20/仕入20
※期末商品の単価と個数だけ問題文に載っている場合もあります。
例:期末商品 単価は100、個数は10個だった。
→期末商品棚卸高は100*10=1,000
精算表問題
問題
期末商品が20有りました。精算表に記入してください。


費用収益対応の原則(応用論点)
さきほど、「売上原価(原価)と売上高(売値)は対応しています。売った商品に対応する売上原価を損益計算書に計上します。」と申し上げました。
これは費用収益対応の原則によるものです。
費用収益対応の原則
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。
(引用:企業会計原則)
ざっくり言えば、収益(売上)に役立った分だけ費用にしてください、ということ。
今回であれば売れ残った分は、もちろん売上に貢献していないですね。
最初のままだと売れ残った分も売上原価という費用に入ってしまうので、差し引いてねということです。
この原則、じつは減価償却費など他の論点にも出てくる原則なので覚えておくと役に立ちます。
最後に
よく、しーくりくりしーと丸暗記せよと教わります。しかし、簿記2級以降も勉強するのであれば、できれば理解して覚えていただきたいと思います。
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(イラスト:いらすとや 6画像分使用)
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